2001年3月16日

文化庁長官官房著作権課御中

ネットワーク音楽著作権連絡協議会

代表世話人 佐々木隆一

著作権等管理事業法施行規則(素案)に関する意見書

 


 先般は、著作権等管理事業法施行規則(素案)に関する説明会を開催頂き、誠にあり
 がとうございました。

 法律及び施行規則とも行政的には充分な検討がなされていると思いますが、従来の
 仲介業務法下での不具合な規定や慣例についても充分配慮されるべきと考えられま
 す。従って権利者と利用者の円滑な関係を確立し、よって著作物の利用の促進を図
 る為、法の運用と施行に関する詳細なガイドラインの制定を求めます。あわせて、
 施行規則(素案)の個別の条項につき、下記の点についてご配慮頂くようお願い致
 します。

 (法の運用と施行に関するガイドラインについて)

 (1)第二章 登録
 著作権や著作隣接権は反社会的な勢力に狙われやすい分野なので、登録を申請する
 法人に関して、反社会的勢力等が紛れ込む恐れがある点を十分考慮して、将来の関
 連法規の改正等も視野に入れ、詳細なガイドラインを設定、運用するなどの配慮が
 必要である。

 (2)第三章 業務
 著作権等管理事業者において、同一作品につき、支分権毎に登録管理と自己管理と
 を使い分けることになると利用者が混乱することにもつながり、このような管理は
 認めないようにガイドラインで定めていただくか、あるいは、混乱することのない
 よう権利情報データベース等を早急に構築して頂きたい。また、管理委託された著
 作物について、利用者が管理事業者から使用許諾を得ても、原著作者(作家等)ま
 たはレコード会社等が人格権を主張することにより、対価の要求または利用の阻害
 を図ろうとするケースも想定される。当該著作物につき人格権等の主張を行う場合
 には、管理事業者を通じてクレームを申し立てるというスキームが妥当であり、あ
 くまでも管理事業者が著作者の代弁者として機能することが基本とすべき旨、明確
 にすべきである。

 (3)自己管理に関するガイドライン
 著作者から権利の信託契約又は譲渡契約を受けている、著作権管理法人(レコード
 会社、放送局などを含む著作権管理会社等)が行う自己管理には、独占契約や独占
 利用が拡大することで、円滑な著作物の流通と社会における利用促進を損なう恐れ
 があるので、規制が必要である。但し、著作者が自ら法人を作って管理する場合は
 その限りで無い。

 *大口の著作権利用者であるレコード会社や放送局などが著作権等の管理業務を行
 う場合はすべて例外無く、登録事業とすべきであると思います。自己管理で行うこ
 とは原則禁止すべきではないでしょうか。

 (4)著作物の重版に伴う特例(著作権等使用料の継続性の担保)
 著作権等管理事業法施行以前にJASRAC等の権利者から許諾を得て製作された
 著作物(出版、レコード、ビデオ、その他:著作権管理事業法施行など視野に置か
 ずに契約処理した著作物を含む)の重版をする場合は、新法適用の際の暫定経過措置
 (2年程度)として、新法適用により事業者側が一方的に損害を受けること(例え 
 ば、権利者が使用料率を一方的に重版出来ぬような高額を提示してきて、実質的に
 放棄せざるを得なくなり、結果として利用者に不利が生ずる、といった場合)が生
 じないよう、既に許諾された使用料率を適用することもできるようなガイドライン
 を定める必要がある。

 (施行規則の個別の条項について)
 (1)第4条第6号について
 法第6条第1項第5号ロ(役員が破産者で復権を得ていないもの)に該当しない旨の証明
 はどのように行うのか。破産者になった者が復権した旨の証明は可能であろうが、
 そもそも破産者ではないことをどのように証明するのか。商法第254条の2におい
 て、同様に取締役の欠格事由とされているが、設立登記又は取締役就任による変 
 更登記の申請書には当該取締役につき欠格事由が存しないことを証する書面の添付 
 を要しない(S57.7.20法務省民4第4455号民事局長通達)とされている。設立登記
 と同様にできないか。

 (2)第8条第2項第2号について
 第4条第1項第4号から第6号までに掲げる書類(貸借対象表、役員の住民票、役員の
 欠格事由の不存在)とされているが、第5号から第7号までに掲げる書類(役員の住
 民票、役員の欠格事由の不存在、役員の履歴書)の間違いではないか。

 (3)第14条及び第15条第4号について
 管理事業者等に対して、第14条において、法第13条第2項を履行した疎明書面を提出
 する義務を課し、第15条第4号において、法第13条第2項の義務を履行しなかった場
 合には、円滑な利用を阻害するおそれがあると認めるものとしているが、法第13条
 第2項は努力義務となっているにもかかわらず書面提出義務及び履行義務を課すの 
 は、法律上の努力義務を省令において義務にしていることにならないか。

 (4)第21条について
 利用者比率50%超の者と使用料比率50%超の者が併存する場合には利用者代表は
 どのように判断されるのか。例えば、NMRCと日本レコード協会を想定すると、NMRC
 が利用者比率50%超で日本レコード協会が使用料比率50%超ということがあり得 
 る。この場合にはそれぞれ単独では利用者代表とはなり得ず、指定管理事業者は利
 用者代表以外からは協議に応じる義務がないので、利用者代表と認められるため 
 に、日本レコード協会がNMRCの構成員となることを促進する意図か。以上