【用語解説】 | ||
厳しい規則ビジネス | ||
何故仲介業務法というような古めかしい名前の法律が登場するのでしょうか?それは、この法律によって、著作権者のためにその利用者との間で楽曲のライセンス契約の締結や交渉に関する業務を行うことが厳しく規制されているからです。即ち、こうした契約について、著作権者の「代理」をしたり、「媒介」つまり、とりもちや斡旋をしたり、また著作権の「信託による管理」を業として行うためには、文化庁長官の許可が必要とされています。そしてその使用料の設定・変更についても、同長官の認可が必要とされているのです。 | ||
JASRACって? | ||
この法律に基づく許可を受け、音楽著作権の仲介業務を行っている唯一の組織が(社)日本音楽著作権協会(「Japanese Society for Rights of Authors、 Composers and Publishers・JASRAC」)です。JASRACは、作詞家、作曲家、音楽出版社を会員とし、音楽著作権の管理等を目的として組織された法人です。JASRACは原則として、会員の現在および将来のすべての楽曲について、演奏権、録音権等、そのすべての著作権の信託譲渡を受けて、これを一括管理するという管理方法を取っています。そのため、楽曲のライセンスにあたっては、ほとんどの場面でJASRACが登場する訳です。 | ||
一元管理とは? | ||
さて、マルチメディアに関連して、楽曲の「一元管理云々」が問題となっていると述べましたが、この「一元管理」というのは、上述のように、現在、音楽著作権の仲介業務がJASRACの独占となっていることと、JASRACが会員との信託譲渡契約約款により、その著作権を一括管理していることを指しているのです。 つまりこの問題は、法律の運用の問題とJASRACの業務執行方法の両者を問うものと言えるでしょう。 | ||
法律の運用 | ||
「法律の運用」というのは、仲介業務法の条文上は、許可を受け得るのは「唯一の団体」に限定されている訳ではないからです。この点、法文上は許可基準も定かでなく、法人に限らず個人でも比較的簡単にトライできそうにも思われます。しかし、これまでの運用の実際は「文化庁長官の自由裁量行為」(「著作権法概説」半田正夫著315頁)により、一元管理が志向されてきたものと言えるでしょう。そもそも仲介業務法は、1932年の「プラーゲ旋風」を契機として、ウィルヘルム・プラーゲ博士の仲介業務を阻止し、国内の仲介業務団体の育成を図ったものと言われています。 | ||
プラーゲ旋風って? | ||
つまり、戦前、BIEM(機械的写調権国際事務局)およびカルテル(ヨーロッパの著作権団体)の日本代理人となったプラーゲ博士は、まだ著作権思想が普及していなかった当時に、音楽使用料を支払わない利用者に対し、内容証明郵便や裁判に訴えるなど、当時としては苛烈とも受け取られる権利主張をしました。そのため、NHKが1年間外国楽曲の放送をとりやめるなどの事態も起こり、マスコミのいう「プラーゲ旋風」なる社会問題にまで発展したのです。こうした経緯で演奏家団体や作曲家団体の陳情を受けた内務省は、当時のナチスドイツの文化統制政策に基づくスタグマ機関に範をとって仲介業務法を制定したということです。当然、プラーゲ博士の許可申請は、その実績にも拘らず、認められませんでした(「ウィルヘルム・プラーゲ」森哲司著・河出書房新社刊)。 | ||
集中管理の利点・演奏権 | ||
さて、集中管理には利点もあります。契約交渉の相手方が限られていて、多数の権利者と個別の交渉をする必要のないことです。それは、音楽という様々な場面で利用される著作物の、特に演奏権や放送権のライセンスの場面で効果的です。例えば、ラジオのリクエスト番組でレコードを放送するたび、そして店で客がカラオケに合わせて歌うたびに権利者の許諾を得なければならないことを想像すれば、こうした利用者とJASRACとの間で、その管理楽曲のすべてを対象として行われる包括(ブランケット)ライセンスの便利さがわかるでしょう。また、権利行使の場面を想像しても、全国津々浦々のキャバレーその他の社交場を相手としての交渉や使用料の徴収はあまりに煩雑で、個々の権利者よりもまとまった強力な組織の方が効率的に実行し得ると言えるでしょう。 | ||
録音権の場合 | ||
JASRACの管理は当初演奏権と放送権に限られていましたが、レコード会社と作曲家との専属作家制度が崩れていくにつれて、次第に録音権にも及んでいくようになります。録音権のライセンスは、レコード会社等の限られた取引相手が対象なので、集中管理による必然性は演奏権の場合のようには高くないものと思われます。しかし、にもかかわらず、JASRACによる一元管理は、劇場用映画やCMの場合の例外(この場合、一律の使用料規定ではなく、権利者との交渉により柔軟に利用条件を決めることができます)を認めつつ、JASRACと利用者間の定型的ライセンスの効率性を発揮してきたものと思われます。マルチメディアの出現までは。 | ||
CD-ROMの場合 | ||
CD-ROMの製作にあたっては、新たに作曲を委嘱する場合も、既存楽曲を利用する場合もあります。作曲家がJASRACの会員でない場合は、作曲家と直接契約します。ライセンスの条件は事情に応じて様々ですが、権利処理の基本は、この連載の第2回で述べたとおりです。JASRAC会員の場合は、CD-ROMが前述の映画やCMのような例外規定の対象でないため、たとえオリジナル楽曲の作曲を委嘱する場合でも、JASRACの一律の使用料規定によることになります。そしてこの場合、CD-ROMについてはビデオグラムの規定を適用するというのがこれまでのJASRACの立場でした。 しかし、インタラクティブメディアであるCD-ROMの場合、リニアメディアのビデオのように、その使用料算定要素となる「総再生時間」を計ることができません。個別の交渉はこれまで、まずこの点をめぐって暗礁に乗り上げてきました。 しかし、最近になってようやく「CD-ROMについては使用料規定が明確でない」ことが認められ、JASRACから新たに提案されたインタラクティブメディア用の使用料規定案をめぐり、現在、マルチメディアタイトル製作者連盟(AMD)との間で許諾の方法や使用料に関する交渉が開始されています。 | ||
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一元管理は「容易」か? | ||
マルチメディアタイトルやネットワークなど、音楽の「新しい利用形態」と一元管理との不適合というか「ズレ」の問題です。 上述で「一元管理」の意味や背景を説明しました。そして、CD-ROMの場合の著作権使用料は、これまでビデオグラムの使用料規定を適用すべきとされてきたのが、最近「CD-ROMについては使用料規定が明確でない」ことが認められ、AMD((社)マルチメディア・タイトル製作者連盟。)を窓口として、JASRACと交渉が進められていることを述べました。 | ||
作品としての性質 | ||
なぜCD-ROMなどマルチメディアタイトルに、ビデオグラムと同じような「1分間いくら」、あるいはレコードと同じような「定価の○%」といった使用料規定を一律に適用できないのか、考えてみましょう。 CD-ROMやDVD-ROMなどは、大容量かつ様々な表現形式の情報をインタラクティブに再現することの可能なメディア(「インタラクティブメディア」)です。そこにはゲーム、インタラクティブ・ムービー、写真集、百科辞典、データベース等、様々な種類の著作物(タイトル)を収納することができます。 タイトルの内容に応じて、その制作にかかわる人員や費用も様々ですし、それに利用される素材の制作費や権利処理の費用や方法も様々です。使用する楽曲にしても、委嘱料を支払って新たに作曲してもらう場合もあれば、既存の楽曲を利用する場合もあります。楽曲の使用量もそれこそ様々です。 従って、タイトル全体に対する楽曲の貢献度を一律に何%と決定することはできません。つまり、商業用レコードのように一律に定価の何%という決め方をすることはできないのです。「1分間当たりいくら」というもの差しも同様でしょう。その使用量によっては、製品を全く採算の合わないものにしてしまうこともあり得ます。 | ||
「定価」がない | ||
「定価の○%」という規定にしても、そもそもCD-ROMはレコードと異なり、「定価」というものがありません。 書物や一部のレコードは、法令により再販売価格を拘束することが許容されています。対してCD-ROM等の場合は、パブリッシャー(メーカー)がその製品を流通に卸すにあたって一般消費者に対する再販売価格を一定の価格(例えば製品に表示した価格等)にするよう、拘束することはできません。こうした再販価格の拘束行為は一般に、独占禁止法により「不公正な取引方法」として禁じられているのです。そのため、中には製品に価格を表示することすらやめてしまったものもあります(オープンプライス)。製品全体の値段の決定は、かなりの部分、マーケットにゆだねられるのです。 | ||
ライセンス方法の多様さ | ||
タイトルのライセンス方法も様々です。パッケージ化して流通させるほかに、ソフトをハードウエアのハードディスクにプリ・ロードし、またはハードウエアと共に梱包して販売することを許諾する方法(OEM/Bundle License)もあります。この場合、タイトルのロイヤルティーは非常に安くなってしまうのが通常です。これだけ1本当たりの価格が違うと、「1複製当たり○円」という一律な使用料では全く対応できなくなってしまうのです。 さらに、タイトルに占める各素材の割合が非常に小さい場合には、「複製本数に応じて支払う」というランニング・ロイヤルティー方式が、ビジネス上非常に非効率となることは言うまでもありません。 この点は、例えば、一人の著者による単行本と、多数の著者による百科事典の違いと同じです。著者が一人なら、増刷の都度出版社が著者に印税を払うのはたいした手間ではありませんが、1冊の本に何十人、何百人もの著者が関わっている百科事典の場合は、増刷の都度著者全員に印税を支払うのは容易ではありません。後者の場合は著作権使用料を一括払いする「買い取り」が合理的ですし、また通常でしょう。 | ||
海外へのライセンス | ||
海外へのライセンスの場合も同様です。また、もっと言ってしまえば、海外にライセンスする機会の多いタイトルの場合は、日本国内ばかりでなく、ワールドワイドに、製作者が日本で全ての権利処理を済ませてしまい、タイトルのライセンスにあたって、その素材である楽曲についてもサブ・ライセンスできるようにしておくことが望ましいのです。 こうして見ていくと、マルチメディアタイトルのライセンス形態やその製品の販売方法、そして素材の利用条件はあまりにも多様です。こうした全ての状況を一定の公式に当てはめて処理するのは、非常に難しいとは思いませんか。そしてこうしたことは、つまるところ権利者がビジネスとマーケットの状況に応じて柔軟に決定していくほかないのではないかと。 | ||
NMRCとは? | ||
ネットワークによる「インタラクティブ配信」のための音楽利用の許諾ルールについては、現在インターネット音楽著作権連絡協議会(NMRC)を窓口として、JASRACとの間で交渉が行われています。NMRCは、平成9年8月、(社)音楽電子事業協会、(社)デジタルメディア協会、(社)日本レコード協会、(社)テレコムサービス協会、電子ネットワーク協議会、日本インターネット協会、日本地域プロバイダー協会、(社)コンピュータソフトウェア著作権協会およびUBAの9団体により発足した団体です。 | ||
NMRCの問題意識 | ||
NMRC誕生の背景には、次のような問題意識があります。 (1)ネットワークを活用したコンテンツ配信事業での音楽利用の機会が増大し、既に専業の音楽配信事業者も誕生していること、 (2)ネットワークならではのボーダーレスな競争が予想されること、 (3)誰でもが情報発信者となり得るネットワークの世界で、一般の企業や個人ユーザー間でも音楽利用の機会が増えることが予想され、こうした利用者に回線接続サービスを提供している通信事業者(アクセス・プロバイダー)や回線接続サービスに合わせてフォーラムやデータ・ライブラリ等の会員相互のコミュニケーションの場を提供している通信事業者(ネットワークサービス・プロバイダー)にとって、音楽著作物利用にかかわる責任の所在や内容、そしてそれらを担保する手続き(ネット上での簡便なライセンス取得手続き等)の明確化が要請されることです。 NMRCは、各団体会員各社を含めた内部の意見調整を終え、この3月12日、JASRACの「インタラクティブ配信に係る使用料(案)」に対する対案を含めた「要望書」をJASRAC他関係各省庁に提出しています。 ◆日経ゼロワン1998年5月号「電脳法律講座」(著者:弁護士 枝美江先生)から転載◆ | ||
MCAの挑戦 | ||
平成10年3月31日、ミュージックコピーライトエージェンシー株式会社(MCA)は、文化庁に仲介業務の許可申請を行いました。この会社は、CD-ROMやDVDといったインタラクティブメディアへの楽曲の利用やインターネット等によるダウンロード配信に関する仲介業務を目指すものです。 朝日新聞には、独占禁止法の第一人者、村上政博・横浜国大教授のコメントも掲載され、「多岐にわたる権利を一括して信託譲渡しなければならない現行のJASRAC方式は行き過ぎである。JASRACの取る経費は適切か、役員数が多すぎないかなど、無競争の独占団体だけではこうしたチェック機能さえ働かない」等、指摘されています。 今後、楽曲のライセンスも経済取引であることを認識した上で、独占禁止法の観点からの検証も必要となるでしょう。なお、同社の申請は4月5日に正式に文化庁に受理されました。受理がなされた以上、その結果と判断の理由は示されるわけで、今後の動向が注目されます。 | ||
サイバースペース・ミュージックとは? | ||
「サイバースペース・ミュージック」とは、その名のとおり、電脳世界をかけ巡る音楽のことをいいます。本命は何といってもインターネットなのですが、その他にパソコン通信のBBSやデータ・ライブラリー、それに衛星波の世界も含んだりするので、これら全てを総称する用語として提唱されています。 この「サイバースペース・ミュージック」に関する許諾ルールの問題を考えるために、今回はまず、サイバースペース上での音楽配信にはどんな方法があるのか、以下にその実情を把握することにいたしましょう。 | ||
サイバースペース・ミュージックの提供方法 | ||
例えば今、インターネットで音楽を配信しているサイトに出合ったとしましょう。様々な曲の名前が載っています。そこでその内の一つをクリックすると。 (1)1、2秒後、歌手Aの歌う「私って幸せ」という曲が聞こえてきました。Real Playerのプラグインで、CDを再生したような演奏が聞こえてきます。「ふうん」。 次に隣の「MIDIコーナー」をクリック。 そしてまた前のホームページ画面に戻ると「ライブコンサート」のボタンがあります。そこでクリック。 (4)でも、これってライブだけじゃなく、「オン・デマンドコーナー」で再放送もされるみたい。じゃあ、明日、帰ってまたチェックしよう。好きなときに聞ける。 | ||
ストリーム配信 | ||
(1)の場合を「ストリーム配信」といいます。この場合、サーバーにアップロードされた「私って幸せ」の音源データが、ユーザーのリクエストに応じてその端末に送信され、再生されます。サーバーへのアップロードは「複製」であると同時に「送信可能化」に、ユーザー端末への配信は「自動公衆送信」に該当します(なお、「複製」や「送信可能化」については、楽曲の著作権だけでなく、音源に関する実演家Aやレコード製作者の著作隣接権も働くので、注意が必要です)。 次に、ユーザー端末での複製の有無を見ると、ストリーム配信の場合「バッファリング」というテクノロジーが用いられていて、「パケット送信」(データをパケットという単位ごとに分割して送信する方法)されるデータが円滑に受信されるよう、あらかじめサーバー側で設定した数秒分だけ、受信データが端末のメーンメモリーに蓄えられます。しかし、このデータは、再生と同時に順次削除されてしまいます。受信によって、キャッシュにデータが蓄積されるということもありません。従って、現在のテクノロジーを前提にする限り、複製はないものと言えるでしょう。 | ||
ダウンロード配信 | ||
(2)の場合、MIDIデータは明らかに端末に複製される点がストリーム配信の場合と異なります。このような配信をダウンロード配信といいます。この場合の端末での複製をどう評価するか、つまり、複製をしているのはユーザーなのか配信側なのか、ユーザーだとすると私的使用のための複製なのか等々も問題となり得ますが、配信側が配信するデータ形式を決定していることから、配信側がユーザーの受信端末に複製物を作成しているものと評価できると思います。 | ||
インターネットキャスティング/ライブ | ||
(3)この場合、ユーザーのリクエストにより、ライブの中継が送信されます。 | ||
オン・デマンド | ||
(4)の場合は、ライブと異なり、サーバーにアーカイブされたデータはサーバーに複製されています。リアルタイムではないので、ユーザーはオン・デマンドに、特定の番組にアクセスすることができます。しかし、音楽著作物にフォーカスするものではないこと等は、ライブの場合と同様です。そこでこの場合をライブは別個のジャンル「オン・デマンドのインターネットキャスティング」として把握しています。 | ||
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サイバースペース・ミュージックの配信方法 | ||
1)「受信者の受信装置に著作物が複製されないデータ形式での送信」と把握される「ストリーム配信」 2)「受信者の受信装置に著作物が複製されることを意図したデータ形式での送信」と把握される「ダウンロード配信」 3)番組をリアルタイムにストリーム配信する「ライブのインターネットキャスティング」 4)サーバーにアーカイブされた番組をオン・デマンドにストリーム配信する「オン・デマンドのインターネットキャスティング」 | ||
既存のメディアと比較する | ||
このジャンル分けは、具体的な配信方法の相違を吟味しつつ、その際、どのように対象となる音楽著作物の著作権が働くのかということに焦点をあてて分類したものです。こうして具体的に考えると、電脳世界をあてどもなくかけ巡るといったとらえどころのないイメージが、、何となく安心な既存のメディアのイメージに収束してくると思いませんか? つまり、受信端末への複製がなされないデータ形式での「ストリーム配信」や「インターネット・キャスティング」は、ラジオやテレビの放送に限りなく近いものと考えられるし、「ダウンロード配信」は、ユーザーに「CD」をダイレクトに送っているようなものだと。そうなら、使用料規定についても、まず、こうした既存のメディアの場合を参考にすればいいんじゃないかと。 | ||
NMRCの理論的主張 | ||
音楽著作物の「インタラクティブ配信」(ここで「インタラクティブ配信」と言うときは、サイバースペース・ミュージックのうち「公衆からのリクエストに応じて、主として家庭内のその他の私的使用を目的として著作物を配信すること」を言い、業務用通信カラオケを除きます。業務用通信カラオケの使用料規定については、すでに決着をみているので)に関わる使用料規定についてのNMRCの主張の出発点は、こうした具体的な配信方法の相違を柱に据えた使用料規定であるべきだということにあります。そうすることが理論的に分かりやすく(つまり合理的である)シンプルな規定につながると考えるからです。 | ||
NMRC使用料案の基本的枠組 | ||
実際、単に「聞き流す」ストリーム配信と「CDを売る」ダウンロード配信とでは、ユーザーへの課金方法や収入源も違ってくるのが自然でしょう。従って、NMRCの使用料規定案は、大まかに、次のように提案しています。 1)ストリーム配信については、これにより受領した総収入(受信者から受領したサービス料収入、広告収入、スポンサー収入および協賛金を含む)のX%。但し年間の最低保証料は5万円(なお、具体的数字については協議中につき、掲載しません。他のメディアの場合については豆辞典参照)。 2)ダウンロード配信については、配信した著作物1曲につき、その受信者から受領した収入のX%。 3)インターネット・キャスティングについては、音楽著作物そのものにフォーカスするのではなく、番組の一部として配信するにすぎないことから、ストリーム配信の使用料規定に準じつつ、これより低率のパーセンテージとする。 | ||
JASRAC案「利用単位使用料」 | ||
JASRAC案も(「暫定使用料案」としながらも)これを書いている5月下旬現在では、インタラクティブ配信の使用料規定を、大きく「ストリーム配信」、「ダウンロード配信」および「インターネット中継」という概念に分けて規定するという点で、NMRC案の要望に添ってきたように思われます(定義の仕方は若干違っています)。従って、この点は、後は定義の明確化や具体的使用料額いかんの問題ということになるでしょう。 | ||
JASRAC案「基本使用料」 | ||
JASRAC案がNMRC案と最も異なるのは、JASRAC案の場合、 | ||
品揃え論 | ||
著作物のインタラクティブ配信(著作権法で言う「自動公衆送信」)に対する使用料のほかに、著作物のサーバーへのアップロード(著作権法で言う「複製」および「送信可能化」)に対する使用料を徴収することそれ自体は、著作権使用料という観点からは理由のないことではないでしょう(但し契約で、こうした一連の行為のうちのどの利用行為を基準としてロイヤルティを生じさせることにするかは、また別の問題です)。けれども、すでにアップロードしている著作物に対する毎月の使用料ということになれば、それはもはや著作物の「アップロード」というより「アップロードの状態」に対する使用料ということになり、著作物の「利用行為」に対する使用料という著作権法上の概念からは説明しきれなくなってしまうからです。両者の主張が最も衝突するのも、この「品揃え論」だと言えるでしょう。 | ||
市場で実現された価値の分配 | ||
「こうした一連の行為のうちのどの利用行為を基準としてロイヤルティを生じさせることにするか」という決め事の交渉の観点からすると、JASRACの「品揃え論」に対して、「市場で実現された経済的価値の分配論」というか、配信から生じた収入に応じた使用料の支払いに一本化すべきだというのがNMRC案だと言えます。現実的に考えても、売れない作品でも、棚に置いているだけで毎月の使用料がかかるとなれば、事業者としてはこうした作品をどんどんサーバーから削除することになり、かえって作家のビジネスチャンスを喪失させることになるのではないかと。それに何より、他メディアの場合はこうした「品揃え」に対する使用料の徴収はない訳で、先の「他メディアと比較して公平な使用料」という観点からも納得できないと主張しているのです。皆さんはどう考えますか? | ||
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